ベビーフェイスと甘い嘘

「さ、茂木に怒られないうちにさっさと済ますよ」


「そうだね。よろしくお願いします」


そう言いながら、着ていた薄手のジップアップのパーカーを脱いで、半袖のシャツ一枚になる。


両腕の痣は、もう痛みはないけれど、治りかけで斑模様になってしまった跡がどうしても目立ってしまう。


「こんな暑い時に長袖で働いてたら、また熱が上がるよ。冷房が効いてたって、真夏なんだからさ」


そう言いながら、九嶋くんはカバンからハンドクリームに似たチューブを取り出した。


リキッドファンデーションのような中身のそれを馴染ませるように少しずつ腕に伸ばすと、両腕の痣はあっという間に目立たなくなった。


「さすがだね、ありがとう」


よし、休んだ分まで働こう。


お礼を言って店に向かおうとした私の腕を、九嶋くんが掴んで引き寄せた。


少しだけ屈むようにして、顔をのぞきこまれる。


九嶋くんの顔は童顔なんだけど、一個一個のパーツは整っていて……よく見ると可愛らしいだけじゃなく、とても綺麗な顔立ちをしている。


だから女装すると身体の線まで柔らかく見えて、色気まで感じるのかなぁ……
< 296 / 620 >

この作品をシェア

pagetop