ベビーフェイスと甘い嘘
「旦那さん……気がついてるんじゃないの?」
制服を羽織った私の首もとに視線を向けながら、九嶋くんが聞いてきた。
職場での会話だからか、九嶋くんは何の事とは言わなかった。だから何が言いたいのかよく分からない。
「気がついてるって、何を?」
「『それ』さ、この前付いてたトコときっちり同じ場所につけられてるから。それってわざとじゃないかなって」
首筋をトントンと叩きながら、彼はあっさりとそう言った。
「この前って……まさか……」
鞠枝さんの送別会の時の……あの時のこと?わざとって……直喜もここに跡を残してたってこと?
「嘘でしょ……」
思わず首に手を置いていた。
「やっぱり気がついて無かったんだね」
「ねーさん小さいから、茂木くらいの身長差があったら目に入っちゃうよ。たぶん一緒にシフトに入ってる人なら全員気がついちゃう位置だと思う」
私の次に小さい唯ちゃんでも160センチ以上はある。
みんなに見られていたかもしれないなんて……。しかも気がつかずに働いてたなんて……。
修吾も気がついてた?
だからあんなに私の行動を気にするようになったり、態度に現すようになったのだろうか。
でもそれは違う、とすぐに思い直す。
だって、その感情は間違いなく『嫉妬』だから。