ベビーフェイスと甘い嘘
「何で言ってくれなかったの……」
「何も聞くなって言ったのは、ねーさんだよ」
「そうだけど……でも、教えてほしかった」
今更こんな事を知るくらいなら、あの時教えて欲しかったのに。
「あの時はね、俺もちょっとびっくりしたって言うか……。でもさ、言い訳するワケじゃないけど、そんなにはっきりとした跡じゃなかったんだよ」
「あいつ、酔ってたけど、さすがにそんなうかつな真似する奴じゃないよなって思ったから……でも、こんな事になるなら言えばよかった」
私が話を切らなかったら、九嶋くんだって『隠したほうがいいんじゃない?』なんて、軽く教えてくれたのかもしれない。
……そうだよね。最初に壁を作ったのは自分なのに、九嶋くんを責めるのは違う。
「……ごめんね。話を終わらせたのは私の方なのに、こんな責めるような事言っちゃうなんて……」
「……違うよ。そうじゃなくて……その前に、一緒に帰ろうとするのを止めればよかったんだ。ねーさん、俺は……」
ピーッ、ピーッ。
九嶋くんが何か言いかけた言葉を遮るように、チャイムが鳴った。
レジからの呼び出しのチャイムの音だ。
防犯カメラのモニターに目を移すと、レジの前に行列ができているのが見えた。
「九嶋くんごめん。レジに行くね」
それだけ言うと、急いで店内へと向かって行った。