ベビーフェイスと甘い嘘

***


「疲れてるのに、お時間を取らせてしまって申し訳ありません。お子さんは大丈夫ですか?」


普通の気遣いのはずなのに、この人が言うと冷たく聞こえてしまうのは何故だろう。


「大丈夫です。今は妹の家に世話になってますから。だけどあまり遅くなると心配はすると思うので、早めに済ませてもらえると助かります」


大体の事情は知られているから余計な説明は省いた。とにかくこの落ち着かない空間から抜け出したい。


店長に電話をしてすぐ、コンビニに程近いマンションの一室に呼び出された。


店長の叔父に当たるオーナーの相澤龍臣(あいざわ たつおみ)さんは、市内の何店舗かのコンビニと、居酒屋と、不動産を所有している。


このマンションもその一つで、オーナーと店長が事務所として使っている場所だった。


と言っても経営に関わりの無い私は、普段ここを訪れる用事は無い。


ここに来るのは、前オーナーから相澤オーナーに経営が変わる時の顔合わせで来た時以来だった。


「手短に済ませられないから、来てもらったんですけどね……」


難しい顔をしながら、店長は言葉を続けた。


「説明は後でします。……柏谷さん、社員になる気はありませんか?」
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