ベビーフェイスと甘い嘘

私の言葉で、店長は明らかに憮然とした表情になった。


「人の好意は素直に受けとれ。俺は力になりたい、って言ってんだよ。はっきり言うとあんたの今の給料じゃお子さんを養っていけない。……違うか?」


『力になりたい』と思ってる人はこんな面倒くさそうにため息吐きながら喋らないよね……と思ったけど、口にするともっと面倒な事になりそうだったので、心の中に留めておいた。


何か口調も変わってるし。きっとこれがこの人の素なのだろう。


「自分の周りにあるものは何でも利用したほうがいい。あんたの周りにだって助けを求めたら手を差しのべてくれる人がいるはずだろ?妹さんとか九嶋とかな。……他に友達だっているだろうし」


「ま、友達は少なそうだけどな」と余計な事も付け加えながら『素』の店長は意地悪くニヤリと笑った。


……その言葉、そっくりそのまま返してやる!


やっぱりこの人の好意の裏には何か企みがありそうだ、と疑いの気持ちまで持ってしまった。


「店長こそ、どうして私を助けようとしてくれるんですか?」


助けを求めてもいないし、むしろこの人のことはずっと苦手だと思ってきた。


勘のいい人だから私がそう思っていたことだって、きっと伝わってしまっているはずだ。
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