ベビーフェイスと甘い嘘
「……うちも両親が離婚しているんだよ。俺が小5の時に。まあ……所謂円満離婚ってヤツで、今でも俺だけじゃなくて、オーナーと父親とは交流があるくらいだし。オーナーは、母方の叔父なんだけどな」
「母は看護士で、養育費もあったけど、将来のためって言ってそれには手をつけずに俺と弟の二人を育ててくれた。手に職があるとは言え、二人を育てるのには苦労をしていたよ。俺はそれを間近で見てきたから……だから柏谷さんを助けたいし、お子さんの事もどうしても気になってしまう」
確かにこのままだと翔と一緒に暮らすのは難しいかもしれない。もうすぐ夏休みも終わってしまうし、芽依の家にいつまでも厄介になる訳にもいかなかった。
「俺を『利用』したら、一人で自活できるだけの生活は保証してやるよ。で、どうなんだ?社員になるか?それとも一人で苦労を背負うのか?」
とても有難い話だと思う。
だけどイマイチ信じられないのは、それを話しているのが散々嫌ってきた店長だからだ。
……そんな事は口が割けても言えないけれど。
「よろしくお願いします」
不安の中で溺れかけていた私は、目の前に差し出された板にあっさりと掴まってしまった。
それがどんな板なのか確かめる権利は……今の所、私には無い。それだけは分かった。