ベビーフェイスと甘い嘘

『淫乱』『男好き』などの直接的な悪口の他に『若い男と遊び歩いている』とか『店長と不倫をしている』とか、根も葉もない内容は特に気にならなかったけど……問題はこの手紙がマンションのポストに入れられているってことだ。


私と翔がここに移り住んだ事を知っているのは、店長とオーナーと九嶋くんと芽依だけだ。住所の変更だってまだしていない。



この手紙は宛名も無いし、切手も貼られていない。つまり書いた本人がここまで来てこのポストに直接入れているって事だ。



この手紙を書いた人には私達が今どこに住んでいるのかだけでなく、この部屋にいるという事まで知られている。


……もしかしたらコンビニから後をつけられたのかもしれない。



ただの嫌がらせとは思えなくて怖かった。



だけど具体的に何かをされた訳じゃないから警察に行く訳にもいかないし、店長やオーナーにこれ以上迷惑はかけられない。



「……あっ、まずい」


手紙を手にしたままぼんやりしてしまっていた。急がないとお迎えの時間に遅れてしまう。


手紙をカバンに突っ込むように入れて、慌ててエントランスを後にした。
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