ベビーフェイスと甘い嘘
「奈緒美さんが話してたこと、もう一度よく思い返してみてよ」
昨日店長に送ってもらう事になった状況も、どうやら九嶋くんは知っているらしい。
「思い返してって……?昨日店長と一緒に帰ってるところを見られたこと?不倫してるって思われたこと?……もう一通り説明したから、大丈夫……だよね?」
そう思いながら九嶋くんを見ると、
「それだけじゃ無いって。……何で分かんないかなー」と、彼は呆れ顔ではぁとため息をついた。
「奈緒美さんはさ、どうしてねーさんの仕事が終わる時間を知ってたと思う?今日だって朝イチで俺とねーさんのシフトが代わるタイミングで来たんだよ?それって仕事が始まる時間も知ってたって事でしょ?」
「……じゃあ、それは誰から聞いたんだろうって……普通思わないかな」
「……あっ」
「奈緒美さんは頭に血が上ってただろうから深く考えて無かったと思うけどさ……奈緒美さんに余計な事を吹き込んだヤツは、ご丁寧にねーさんのシフトまで教えてたって事。奈緒美さんが直喜に依存してることを知ってて、直喜や……俺とかが、ねーさんと怪しいって話をしたらどうなるかって分かった上でね」
……つまり、その人は相当私達の周りを調べあげてるって事だ。
『ウサミ』で噂を流して奈緒美さんに私の悪口を吹き込んだ人は、クレームをつけた人と手紙をポストに入れた人と同一人物なのだろうか。
「でも奈緒美ちゃんの事もあるし、これ以上誤解されたら九嶋くん困らない?」
「俺の事はいいから。お願いだから送らせてよ。……言っとくけど、店長命令でもあるんだからね」