ベビーフェイスと甘い嘘

『凄く似合ってるよ』

赤いセルフレームの眼鏡は、柔らかなフォルムに一目惚れをして、試しにかけてみたら思ったよりも軽いかけ心地が気に入って……


……修吾が似合ってるねって言ってくれたから、嬉しくなって買ったものだった。


「指輪の代わりにしちゃだいぶ安いけどさ。子どもが大きくなったら、みんなで一緒に結婚式を挙げような」


子育てをしていたら着ける暇がないからと、婚約指輪はいらないと言った。そんな私に修吾はいつか結婚式を挙げようと言ってくれた。


……もう5年も経ったし、そんな約束をしたことなんかすっかり忘れているだろうけど。



「そう言えばねーさんってさ、最近まで仕事する時も眼鏡かけてたよね?」


確かに、コンタクトに換えたのは半年ほど前のことだ。


仕事の邪魔だからって言っていたけど、本当はこの眼鏡を見ていると、修吾と一緒にいてしあわせだったと思いこもうとしていた日々を思い出してしまうから、かけたく無かっただけだ。


眼鏡が折れた時、奈緒美ちゃんに叩かれた事なんてどうでもいいくらいショックを受けていた。


それと同時に、ここまでショックを受けている自分にも驚きを感じていた。


修吾に対する愛も情も枯れてしまった。確かにそう思っていたはずなのに。


修吾に愛されたいと努力しては叶わずに心の中で泣いていた日々を思い出して、無惨に折れてしまった眼鏡を自分の心と重ね合わせて。


それでショックを受けているなんて、ほんと、矛盾している。
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