ベビーフェイスと甘い嘘
「もう……平気なの?」
私の問いに九嶋くんは苦笑いを返した。
「平気だと思ってたんだけどな。ただ、辛い事から逃げて平気だって思い込んでただけだったのかもしれない。……奈緒美さんに会っただけで動揺しちゃったしね」
寂しげな表情で呟くように口にしたその言葉が、彼の気持ちを伝えるようで私まで悲しくなった。
「昔はね、独りになるのが怖くて……誰かと繋がっていないとたまらなく不安だった。奈緒美さんに会うまでは、もう大丈夫だと思ってたんだけどな」
九嶋くんは専門学校を卒業した後、なぜか就職しないでそのままコンビニに残ったと、前に初花ちゃんから聞いたことがあった。
初花ちゃんはその理由は分からないって言っていたけど……
たぶん、最初はバンド活動がしやすいからっていう理由で彼はバイトを続けていたはずだ。
でも仲間を失った今でも働き続けているのは……
「九嶋くんは、何があってもすぐに誰かに気がついてもらえるから、夜勤の仕事をするようになったの?」
確信を持って聞いた。
彼の親しみやすい表情の裏に隠された素顔に、その傷口に……たぶん私は触れようとしている。
ため息を一つついて、どこかほっとしたような表情で九嶋くんは答えてくれた。
「どうして……ねーさんは、分かっちゃうんだろうね」