ベビーフェイスと甘い嘘
「……それにしてもさー」
呆れ顔で芽依が話し出す。
「噂がすぐに面白おかしく広がっちゃうのは田舎だし、うちの実家のほうもそうだったから分かるんだけどさ。ほんっと、ウサミナオキの噂だけすぐに広がるよね……」
芽依は、はぁーと深いため息を吐きながらローテーブルに突っ伏した。まさか自分が噂話に巻き込まれるなんて思ってもいなかったんだろう。
たぶん『あんな奴のどこがいいの?私には全然分かんない!』って言いたいんだろうけど、正直者の芽依がその思いを口にしないのは、私の気持ちを知っているからだと思う。
心の中でごめんね……と謝りながら、すっかり温くなってしまったビールをぐっと飲み干した。
ローテーブルの上には、空になったビール缶が何本も並んでいる。
その殆どを空けた犯人が、またけらけらと笑いながら口を挟んだ。
「そりゃ、モテるわよー。でもね、昔は勇喜くんのほうが凄かったのよ。ずっと野球やってて、高校の時はプロになるんじゃないかって言われてて。すっぱり辞めて大学に進学した時はみんな驚いてたわ」
千鶴ちゃんは地元民だから詳しいのは分かるけど、初花ちゃんみたいに歳が近い訳でも無いのに噂話が耳に入るくらいだから、よっぽどモテるんじゃないのかな……
それに、唯ちゃんだってあんな風に……
チクンとした痛みを伴って胸の中にもやもやが広がっていく。
もう会わないって言ってあんな哀しい顔をさせてまで遠ざけたのに、こんな話を聞くたびに嫉妬するなんてどうかしてる。