ベビーフェイスと甘い嘘

「ウサミをよろしくお願いします!」


能天気なほど、明るい声がすぐ近くで響く。


気がついたら奈緒ちゃんがすぐ側まで来ていた。


……もうやめてくれ。


荒んでいく気持ちをひたすら隠して顔を上げたその瞬間、この空間に似つかわしくない表情をしている人を見つけた。


ベージュゴールドのドレスを着ているその人は……たぶんさっきまで奈緒ちゃんと会話をしていた人だ。


この場にいる人は皆、しあわせそうに微笑む奈緒ちゃんを見ている。だから、その人の表情に気がついている人は誰もいなかった。


その可愛らしい顔立ちには何となく見覚えがあったけど、よく思い出せない。


驚いたのはその人の目だ。
今の俺と……全く同じ目をしているように見えた。


まるで鏡を見ているようだった。


これ以上このしあわせを見ていたくない。
苛立つ。我慢がならない。


まさに、そんな目だった。



「アカネちゃんぼんやりしてるけどどうしたの?酔っちゃった?」


アカネちゃん……か。一緒にいるのは、奈緒ちゃんの同僚の人達だ。


「せっかくの結婚式だから、来て欲しい人みんな呼んじゃった!」って奈緒ちゃんが言ってたけど……誰だったかな。


記憶を呼び覚まそうと考え込んだその時、ふっと愛しそうに大きなお腹を撫でていた彼女の姿が頭の中に浮かんだ。
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