ベビーフェイスと甘い嘘

……あの人は、たぶん俺と同じような気持ちを抱いている。


しあわせばかりが溢れているこの空間で。


たった一人だけの仲間を見つけたと……そう思った。


アカネさんは「ちょっと座ってきますね」と手を振りながらその場を離れて行った。


あの建物の中で座る所といったら……喫煙スペースの前にベンチがあったはずだ。


俺もそっと後を追いながら、反対側の入り口から先回りをして喫煙スペースへと入っていった。


煙草なんて吸わないのに。


そんな馬鹿な自分に苦笑いをしながら。


***

俺と同じ目をしている人が同じ空間にいた。


それだけで、どんな人なのか気になった。


同じ目をしていても思いは全く違うはずで……


悲しみなのか、苦しみなのか、それとも諦めなのか……


とにかく、その心の中を少しだけ覗いて見たくなった。



ーーちょっとした好奇心。


最初は、ただそれだけだった。


声を掛けるきっかけなんていくらでもあるし、この場なら不自然じゃない。


酔っていると話していたから心配するふりをして話しかけたら、じっと見つめられてしまった。


きょとんとした表情が可愛い。
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