ベビーフェイスと甘い嘘
その後、見つめ合っていた事に気がついて、真っ赤になりながら「すっ、すみませんっ」と慌てて謝っていたのも、可愛いと思った。
「旦那さんのお友達ですか?」と聞かれた時には、座っていたベンチからずり落ちそうになるほど驚いた。
俺の事、知らないんだ……
そう思ったら笑い出したいほど気分が高揚した。
ここで笑うのはさすがにおかしいので、口元に力を入れたら何だか不機嫌にも見える表情になってしまった。
怒っていると思われたのか、酔いざましの為に渡したフレーバーティーを無言で飲み干して、彼女は「親切にしてくれて、ありがとう」と逃げるようにベンチから立ち上がった。
そんなしぐさを見て、思わず『しあわせ』の輪の中に戻ろうとしていた彼女の腕を掴んで無理やり引き戻してしまっていた。
「ねぇ……今からどこかに行きませんか?二人きりで」
なぜか誘いの言葉を口にしながら。
「だってさ……あなた、あのしあわせな空気の中にいられなくてココに逃げて来たんでしょ。……違う?俺も同じだから分かるんだよね」
誘われたという意味を理解して、俺に対して嫌悪感を露にした彼女にこう言ったら、明らかに動揺した表情になった。
俺のことをそっけなくあしらおうとして、でもそんな冷たい態度を取ることに慣れていない様子もやっぱり可愛らしくて……その心の中だけじゃなくて、身体にも無性に触れたくなった。
こんな衝動は始めてで、何かに突き動かされるように夢中で求めてしまった。
アカネさんが今日限りの関係だと割りきった上で誘いに乗ってきたことは分かっていたし、俺だって最初はそのつもりだった。