ベビーフェイスと甘い嘘

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「お前さ、俺に黙ってあんだけの事しといて、既読スルーとか着信無視するとか、ほんとふざけんなよ」


勇喜と奈緒ちゃんの結婚式から、ほぼ半月が経ったある日。


仕事を終えて帰宅すると、誰もいないはずの離れのカギが開いていた。


ーー分かりやす過ぎだって。


思わず苦笑しながら、玄関の引き戸に手をかけた。


その分かりやすい侵入者は、堂々と他人(ヒト)のベッドを自分の物のように使ってスヤスヤと眠っていた。


怒られるのは分かってるんだけど……寝顔があんまり無防備で可愛らしいので、ついからかってしまいたくなる。


この人のこういう無防備な所は、アカネさんと凄く似ているんだけど、残念ながら中身はちっとも可愛くない。


詳しくは……ここでは言わないけど、恋人を起こすようなやり方で優しく優しく起こしてあげたら、殴り倒されるくらいの勢いでキレられた。


コンビニではいつもニコニコとして、お人好しそうなイイ人の顔で働いている智晶さん。


その素顔は決してお人好しでもイイ人でもない事を知っているのは……今は、俺か『still』で働いている人達くらいだろう。


自分が女装をして『still』で歌っている事をアカネさんに知られてしまった智晶さんは、当然と言えば当然だけど、めちゃくちゃ怒っていた。
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