ベビーフェイスと甘い嘘
可愛いくせに顔のパーツは意外と整っているから、睨むと結構迫力がある。
「何がデートだ、うかれやがって。うかれついでに人の秘密もあっさりばらしやがって」
「……そんなにばらされるのが嫌なら、あんな格好して歌わなきゃいいのに」
「……俺もお返しにマスコミにばらしてやろうか?今ならすぐに記事にしてもらえるだろうな。タイトルは『消えたピアノ王子の現在。実家に寄生して泥沼不倫中』って感じか……いい小遣い稼ぎになるなぁ」
「ごめんなさい。すみません。もう言いません」
既に、智晶さんはアカネさんから大体の事情を聞き出したのだろう。
迂闊だと言われるのは分かっていたけど……本当に不思議なんだけど、あの時はアカネさんに声を掛けたいっていう衝動を抑えきれずに、飲み込まれるまま突き動かされて……そんな自分を止める事が出来なかった。
……それに、俺が迂闊だったら、アカネさんは無防備すぎる。
彼女があんな目をしてあの場に立っていなかったら、最初から踏み込んだりしなかった。
「……『泥沼不倫』なんかしてないし」
ボソリと呟くように反論した俺のそんな感情も見透かすように、はぁー、と智晶さんは大げさにため息をついた。
「このままだったら間違いなくそうなるだろ……ねーさん、流されやすそうだし。お前だってさ、わりと本気なんじゃないのか?『still』に行く前に『sora』に連れてったんだよな」
あーあ……アカネさん、喋り過ぎだよ。
昔から、智晶さんにはごまかしがきかないんだから。
今智晶さんがついたのと同じくらい……いや、もっと大きなため息を、俺は心の中でついていた。