ベビーフェイスと甘い嘘

***

「よぉ、直ちゃん。ちょっと座って休んでいけや」


駅前商店街の店舗にお弁当を配達に行くと、必ずサンキューマートの前でこの人に呼び止められる。


「俺、仕事中だよ」


皆から『源ちゃん』と呼ばれているこの人は、この商店街の主のような存在だ。


神出鬼没。友人が多くて顔も広く……俺の事を色眼鏡で見ることもなく、むしろ積極的に話しかけてくる、ちょっと変わったじいさんだ。


「まあまあ。若いんだから時間なんて後でなんぼでも巻けるだろう。寂しいじーさんの相手してくれや」


「源さんが寂しいとこなんて一度も見た事無いけどね」


手招きされるまま、コンビニの入り口より少し手前にあるベンチに腰かける。


本当に今日は忙しいんだけど、源さんの誘いは断れない。


……この人には、俺の秘密を知られちゃったからな。



「今日は、初ちゃんと樹ちゃんだよ」


毎回聞いてもいないのに、わざわざコンビニの中で今働いている人が誰かって教えてくれるのも……



「茜ちゃんはお休みだ。残念だねぇ」


こんな一言で、俺をからかって楽しみたいだけなんだと思う。
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