ベビーフェイスと甘い嘘

昔から智晶さんには、お前のそういう所がめんどくさいんだよ、と散々言われてきた。


今だって『どうせそんなに酔ってないだろ』とでも言いたげな冷ややかな視線で見られている。


それを無視して茜さんに話しかけて、智晶さんが接客でレジに戻った隙に、「手、繋いでくれたら帰る」とワガママを言ってみた。


「……わかった。『ウサミ』まで送ればいいのね?」


やっぱりしょうがないな……という表情で、でもお願いした通りに手を繋いでくれた優しさが嬉しかった。


自分自身を受け入れてもらったようで、何だか安心する。


茜さんの手の温もりに癒されて、少しだけ気持ちが浮上した。


……だけど、浮わついた心はすぐに地面へと叩き落とされることになる。



「直喜は、甘え上手だし、自分のペースに巻き込むのが上手でしょ?要領も良さそう」



俺のワガママをどう捉えたのか……茜さんがこんな事を言ってきた。


甘え上手で要領がいいなら、今の……何もかも中途半端で情けない自分にはなっていないはずだ。



ニコニコと顔だけは微笑みを浮かべながらも、心の中のモヤモヤは広がって、鬱々とした気持ちに拍車がかかっていく。
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