ベビーフェイスと甘い嘘
昨日、配達の途中でサンキューマートに寄った時は笑顔で話しかけてくれたのに……
何で今、こんなに痛々しい姿になってるんだ?
「頬も腫れてるし……たぶん見えない所も痣になってると思う」
茜さんの姿を呆然と見ていると、智晶さんが呟やくようにそう言った。
その言葉を反芻するよりも先に、すぐさま「お前のせいだからな」と吐き捨てるように言われた。
……俺のせい?
「これ見ても意味分かんないか?……お前、前に同じ所に痕付けただろ」
智晶さんは茜さんに近づくと、汗で首筋に張り付いた髪をそっと掻き上げた。
躊躇いも無く触れるその仕草に、胃の奥がキュッと縮むように痛む。
だけどその痛みも一瞬の事で、露になった首筋を見た瞬間にサッと自分の顔から血の気が引いていくのがはっきりと分かった。
その首筋には、くっきりと紅い痕が付けられていた。
まるで『お前は俺のものだ』と主張しているように。
それは、自分の妻に近づく誰かを牽制しているというよりも、夫を裏切った妻に対する制裁を意味しているような気がした。
腫れ上がった頬と痣だらけの腕、そして首筋に付けられた紅い痕を目にして、ようやく自分が本当に取り返しのつかない事をしてしまったのだと理解した。