ベビーフェイスと甘い嘘
「まさか、この怪我……」
旦那に……暴力を受けた?俺が前に首筋に付けた痕を見られて……?
だけど…………何で今さら?
あの日から一ヶ月以上経っているのに。……それとも、今までずっと暴力を受け続けていたのか?
いや、違う。夏祭りの日に浴衣の襟元から見えた胸元も、首筋も、繋いだ手も、触れた足首だって……痛め付けられた所なんて無かったはずだ。
「今朝、この状態でコンビニに来たんだ。足元もふらついてて……殆ど眠ってないはずだ。……もし、俺が想像した通りにねーさんが傷つけられたんだとしたら、お前の事を許さないからな」
智晶さんは茜さんを切なげに見て、それから俺に視線を向ける。その顔は、必死に怒りを堪えていて……智晶さんも、茜さんに想いを寄せているのだと気がついてしまった。
「ねーさんが目を覚ます前に帰れ。芽依さんが迎えに来るから。……お前だってまた叩かれたくないだろ?」
そう言った智晶さんのほうが、よっぽど俺を殴りたいような表情をしている。
「何で俺を呼んだの?」
思わず疑問が口を突いて出る。
怒りを堪えきれなくなる事が分かっていて、わざわざ俺を呼んだ意味が分からなかった。
俺のせいでどれだけ茜さんが傷ついたのか見せたかったから……?だとしても、今この状況で呼ばなくてもいいはずなのに。