ベビーフェイスと甘い嘘

***

「柏谷さん。ちょっと……相沢と話があるので30分くらい抜けていいですか?それから……」

「分かりました。レジもフライヤーも何とかしますから、気にしないで行ってきて下さい」


何か言いかけた店長の言葉を遮って返事をする。そのまま背を向けると、後ろからはぁと静かにため息をつく音が聞こえた。


大人げないと分かっていても、まだ今はこんな感じでしか会話をする事ができない。


今日のシフトは店長と組んで朝日勤。店長は夕方までの通しだ。


初花ちゃんはお休みだったけど、今朝雪が降ったので駐車場の様子を見に来てくれていた。


店の前は雪が積もることはないけれど、店舗の裏にある駐車場はアーケードの外にあるので、雪掻きをしなければいけない。


今までは雪が積もると必ず前オーナーが様子を見に来て雪掻きをしてくれたので、お店を離れられない時は本当にありがたかった。


「駐車場の雪掻き大変かなって心配して駆けつけたのに、オーナーが除雪機で雪掻きしてましたよ……相澤家って金持ちですね」


朝一で駆けつけてくれたのに出番が無かった初花ちゃんをちょっとだけ気の毒に思いながらも、こうして自分の仕事以外に気が回せるようになった事や、むすっと口を尖らせて話すその表情がだいぶ明るさを取り戻しているのを確認する事ができたのは嬉しかった。
< 535 / 620 >

この作品をシェア

pagetop