ベビーフェイスと甘い嘘

「このまま帰るのも悔しいんで、たまった仕事を片付けます!」


そう言って初花ちゃんはスタッフルームへと入って行った。


店長は暫くスタッフルームには入らずカウンターの備品なんかを補充しながら扉の回りをウロウロしていたけれど、やがて決心したように中に入って行った。


この前二人が同じようにスタッフルームで話をした時、初花ちゃんは明らかに泣いたと分かるような、真っ赤な目をして店舗の方へと戻って来ていた。



また初花ちゃんが泣いたりするような事が無ければいいんだけど……



レジに立ったままで後ろを振り返り、少しだけスタッフルームの扉を眺めてから、心配する気持ちを振り切るように前を向いて店の入り口へと目を向けた。



自動ドアが開いて、何人かお客さんがお店へと入ってくる。


「いらっしゃいませ」



笑顔で挨拶をしてまた入り口の方を見た時、まるで急にそこに現れたかのように、ふらりと源さんが店の中に入ってくるのが見えた。

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