ベビーフェイスと甘い嘘
「源さん、いらっしゃいーー」
『いらっしゃいませ』と言いかけて、源さんのあまりの顔色の悪さに挨拶の言葉が喉の奥へとヒュッと引っ込んでいった。
ふらふらとした足取り。土気色の顔。視線はこちらに向いてはいるけれど、どこか焦点が定まらず虚ろな目つきだった。
明らかにいつもの源さんと様子が違う。
「……源さん?」
戸惑いながらも呼び掛けると、ようやく目が合った。
一歩、二歩。
源さんは、私のいるレジの方へふらつきながらもゆっくりと歩いて来る。
……何だか嫌な予感がする。
側に行かないと。
レジを離れて、カウンターの扉を開けようと手をかけたその時、源さんはつんのめって前に倒れそうになった。
……危ないっ。
とっさに駆け寄って受け止めようとしたけど、そんな私を見て、源さんは体勢を立て直すようにぐっと足を踏ん張って身体を真っ直ぐに起こした。
……良かったとほっとしたのもつかの間、そのままフッと電源をオフしたように動きが止まって後ろへと身体が倒れていった。