ベビーフェイスと甘い嘘

「茜さん。……茜さん!」


ポンと肩を叩かれて我に返ると初花ちゃんが固い表情で私の顔を見つめていた。


「レジ、できますか?」


チラチラとこちらを気にしながらも、二、三人がレジの前に並んでいるのが見える。


……レジ?


……私、何か今しなきゃいけなかった……はず



「あ、でも、救急車を……」


「救急車なら私が呼びます。……飲んでる薬もかかりつけのお医者さんも知ってるから」


ようやく思い出した私の言葉を遮って、初花ちゃんは冷静に、私に言い聞かせるようにゆっくりと話した。


その手には既にスマホが握られている。


私の今するべき事は源さんの側にいて救急車を呼ぶ事じゃない。


レジに立つ事。


これ以上ここにいても、私ができる事は何も無いんだ。


なんとか頭を切り替えて、レジの方へと向かう。


「ミスのないように、お願いします」


一言だけ、初花ちゃんは声をかけてきた。


救急車を呼ぼうとしていた手を止めてまで声を掛けなければいけないほど、私は頼りなく見えたのだろうか。

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