ベビーフェイスと甘い嘘

言い様の無い悔しさで胸がいっぱいになった。


何も出来なかった無力感に、涙が込み上げそうになる。


そんな気持ちを振り切るように、私はぎゅっと目元に力を入れてレジへと立った。


***

やがて救急車が到着した。店長は初花ちゃんに店に残って欲しいとお願いをして、そのまま救急車へと乗りこんだ。


救急車が到着する直前、二人が何か懸命に源さんに話しかけていたように見えたけど、ストレッチャーに乗せられた時には源さんは目を開けていて、救急隊員の呼び掛けにもきちんと答えを返していた。


どうやら、意識が無くなっていた訳では無さそうだ。


でも倒れた時に頭を打ったように見えたけど……打ち所は悪くなかったんだろうか。


心配しながらその様子を見守っていた私に、初花ちゃんは呟くような声だったけど、私の目を見てはっきりと言い切った。


「大丈夫。……あの人は医者だから」



「初花ちゃん……」



……いつから知っていたの?

……ずっと?

……もしかして、最初から?


お互いにお互いの事を知っているのに、それを隠しているなんて……



あなた達は……一体どんな関係なの?
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