ベビーフェイスと甘い嘘

……それに、どうしてそんなに……冷静でいられるの?



「……私、電話してきます」


初花ちゃんは源さんの家とオーナーに連絡をしてから、急に仕事を抜けた店長が残した仕事を代わりに全部片付けながら接客をして、自分の仕事までこなしていた。


その姿は誰が見てももう立派な『副店長』で、初花ちゃんを守るとか、支えてあげなくちゃと考えていた自分が恥ずかしくなるくらいだった。



***

勤務時間が終わった。


店長は源さんの家族が病院に来たから、と昼前にはこっちに戻って来ていた。そして私の勤務時間が終わるとすぐに初花ちゃんを連れてまた病院へと行ってしまった。


今日の日夕勤は唯ちゃんだ。そして、いつの間にか夕方まで通しのはずだった店長の代わりに、藤田くんがシフトに入っていた。


病院まで付き添い源さんの状態を説明して、シフト変更まで考えて手筈を整えていたなんて……


初花ちゃんだって冷静で無駄の無い対応をしていた。けれど、初花ちゃんにとって源さんは身内と同じくらいに大切な存在だ。動揺していない訳がない。


それに、病院へ付き添うならシフトに入っていない初花ちゃんでも良かったはずだ。でも、店長は初花ちゃんを行かせなかった。


病状も分からず、不安な気持ちのまま病院で時間を過ごすよりも、店にいたほうが精神的に負担が少ないと瞬時に判断したのだろう。
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