ベビーフェイスと甘い嘘
初花ちゃんは免許を持っていない。それも分かっていて、店長は店に支障が無いようにシフトを調整した上で初花ちゃんを源さんの元へ送り届けたのだ。
たぶん自分で送りたかったんだ。ショックを受けているだろう初花ちゃんの側に出来るだけ居たかったのだと思う。
そうじゃなかったら、病院まで送るだけだったら私に頼んでもいいはすだし、わざわざシフトまで代える必要は無いはずだ。
全ては初花ちゃんを想っての行動だとしか思えない。
……これが愛じゃなかったら、何だと言うのだろう。
今まで、初花ちゃんに対して店長が何か不誠実な対応をしたんじゃないかと疑っていた自分が恥ずかしい。
……そろそろ帰らないと。
暫くスタッフルームでぼんやりした後で、だるい身体を無理やり動かした。
今日は本当に疲れた。
身体だけじゃない。源さんが倒れた後だから、動揺したままレジを間違えないようにといつも以上に気を張って接客をしたから、心もクタクタに疲れてしまっていた。
いつもは何時間も立ちっぱなしでも気にならない腰や下半身も、今日は何だか重苦しく、鈍い痛みを感じる。
「……っ」
スタッフルームの扉を開けて、そのまま店舗に視線を移した瞬間に、源さんがスローモーションのように倒れていく光景が目の前に甦って、思わず息を飲んだ。