ベビーフェイスと甘い嘘

「…………嘘つき。こうしてると、ちゃんと分かるよ」


囁かれた意味深な言葉に、ますます頬が熱くなる。


胸元に顔を埋めているから、直喜にさらに赤くなった顔を見られなくて済んだのは良かったのかもしれない。



……そうでも思わないと、この状況に耐えられない。


今と同じ状況……所謂お姫さま抱っこというものをされたのは、あの日が生まれて初めてだった。



二人で結婚式を抜け出して、ホテルの部屋に入るなり抱き締められて……


名前を呼ばれて驚いて振り返ったら、いきなり深いキスをされて…………



足の力が抜けてその場にしゃがみこんでしまった私を、直喜は今みたいに軽々と抱き上げてベッドへと運んだのだ。




……あの時の事を覚えているから分かるよって言いたいの?


そう思ったけど、『どういう意味?』って聞き返す事も、顔を上げる事すらできなくて。



……やっぱりこんな顔を見られなくて良かった。



恥ずかしくて、情けなくて真っ赤になって、



でも直喜とまた会話ができて、触れる事ができた。



涙がこぼれ落ちそうなくらい嬉しくて、口元が緩みそうなのを必死に堪えている今の顔を。

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