ベビーフェイスと甘い嘘
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「家まで送るから」
そう言われて乗せられたのは、以前乗った車とは違う白のミニバンだった。
たぶん配達で使っている車なのだろう。車体に文字は入っていなかったけど、フラットにしてある後部座席のほうには、『ウサミ』の文字が入った番重が無造作に重ねて置かれていた。
「……配達の途中だったの?」
何気なく聞いた一言に、何故か直喜はぐっと押し黙ってしまった。
配達の途中で……コンビニに寄ろうとしただけ?
私に会ったのは偶然?
あんなに悲しい顔で「もう話し掛けないから」って言ってたのに、私に声を掛けようとしてくれたのはどうして?
……酷い言葉であなたの事を突き放したのに。
聞きたい事は山ほどあるのに、口には出せなかった。
そのまま直喜も何も答えずに車を走らせた。
コンビニの駐車場から大通りへと出た車は、商店街の信号から二本目の信号を越える手前で左折した。私のマンションへと曲がる道も、もうとっくに過ぎてしまっている。
それに、前に送ってもらった時はマンションの近くのスーパーで降ろしてもらったし、そこだって今住んでいるマンションとは反対方向だ。そもそも引っ越した事だって直喜は知らないはずだ。
……じゃあ、この道って。
「あの……」