ベビーフェイスと甘い嘘
「この車は返さなきゃいけないから、ちょっとだけ付き合って」
……やっぱり、『ウサミ』に向かってるんだ。
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。店の方には行かないから」
目を泳がせながら分かりやすく焦ってしまった私を見て、直喜は苦笑いを浮かべながら言った。
そうこうしているうちに、車はどんどん小路へと進んでいき、やがて車が入れないくらい細い道に差し掛かった所で、キュッと停まった。
「もう立てる?」
不意に聞かれたから、とっさに「だいっ……じょうぶ」と答えてしまっていた。
正直まだ立ち上がれるかどうか微妙だけど、ここでうかつに『立てない』なんて言おうものなら、またお姫さま抱っこで移動することになってしまう。
それくらい、目の前の直喜は心配そうな顔を私に向けていた。
「つかまって」
そして、直喜は車から降りると素早く助手席側へと回り込んで、手を差し出して来た。
考える間も与えられないままその手を掴み、恐る恐る地面へと足を着ける。
驚きで力が抜けてしまった足腰の関節が、まだきちんと噛み合っていない。
足を踏みしめる度にカクン、カクンと何かがずれているような、妙な感触がした。