ベビーフェイスと甘い嘘
***
火曜日の午前中。
私と九嶋くんは『pastel』に来ていた。
もちろん、お話をする為だ。
話をするなら、早いほうがいい。
顔馴染みの店員さんに「ブレンドとホットミルク」と注文すると、ちらりと意味ありげな視線を向けられた。
……絶対先週と違う子連れてるって思われたわよね。
若い子をとっかえひっかえしてるなんて思われたら、もう恥ずかしくてここには来られない。
「あいつ、歌ってる俺に会わせるのが目的だったの?」
九嶋くんが苦々しい表情で言った。あいつ、とはもちろんナオキのことだ。
私は「さあね……」と首をかしげる。
目的なんて分かんない。それよりも今は九嶋くんのことも気になって仕方がない。
「えーと、九嶋くんって……アレなの?今流行りの女子男子?」
「……何かいろいろ混ざってない?それ言うんだったら、『女装男子』じゃないの?」
「男の人が好き……とかじゃないのよね」
「冗談で言ってるんだよね」
冗談では無かったし、『ゲイかオネェじゃなかったら……女装は趣味?』って言いたかったんだけど、視線が鋭くなったので、慌てて言葉を飲み込んだ。
そんなんじゃねぇし……と九嶋くんは不満顔だ。
「男の姿で歌ってると、色々とめんどくさいんだよ。声も男の声には聞こえなかったでしょ?あの格好のほうがうけもいいしね」
確かにめちゃくちゃ綺麗だった……
でも、あんなに綺麗だったらお客さんの目を引いて、かえって面倒なんじゃないのかな?
普段の九嶋くんは綺麗な顔立ち、というよりは年齢よりも幼く、可愛らしい顔立ちをしている。
顔立ちだけでいったら、店長のほうがよっぽど整っていると思う。
身長は初花ちゃんと同じくらいだけど、女性の格好をしても不自然に見えないのは身体全体の印象が中性的だからだろう。線が柔らかく見えるからだと思う。