ベビーフェイスと甘い嘘

「九嶋くんって、お化粧上手だね」

「……それ、どういう意味?」

「え?誉めてるんだけど」


心の底から誉めたつもりだったのに、何故か九嶋くんは憮然とした表情になってしまった。


「ねーさんってさ、何かナオキに弱味でも握られてんの?」

「今まであの店に現れるような生活して無かったでしょ?無理やり、には見えなかったけど、突然連れて来られたように見えたから」

だけど、意外だったよな、と九嶋くんは言葉を続けた。


「3年……ぐらいだよね?一緒に働いてきたのにあんな顔はじめて見た。……ねーさん、何で泣いてたの?あんな風に感情押し殺して静かに泣く人なんてはじめて見た」

私は質問には答えずに、九嶋くんに聞き返した。

「九嶋くんは、歌うことで感情を表に出す人なのね。3年も一緒に働いて……まぁあまり接点は無かったけど、でもあんな顔知らなかったな」

「え?美人だって?」

茶化そうとする言葉を遮って続ける。

「あなたって……泣くように歌うのね。最後の曲……あんなに悲しい歌声はじめて聴いた」

その言葉を聞いて、ちょっとだけ九嶋くんの顔つきが変わった。

「ふーん。『アレ』を聴いてそう感じたんだ……ねーさんって他人に興味が無い人かと思ってたんだけど、違うんだね。関心のあることと無いことをきっちり分けてるんだ。しかも、結構鋭い」


興味が湧いてきちゃったなーと嬉しそうに笑う顔を見る。


なんか先週もこの店で……同じような言葉を聞いたような気がする。
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