ベビーフェイスと甘い嘘

「ナオキの事なら、ちょっとだけなら力になれるよ。昔からの知り合いだし」

『力になれるよ』と言っておきながら、その目は『だから全部話してよ』と言っている。

「……結構です、って言ったら?」

恐る恐る聞いてみる。

「『スピーカー』行きかな」

……やっぱり。

予想通りの言葉にげんなりする。

スピーカーとは、この4月から新しくコンビニにバイトで入ってきた 茂木 唯(もてぎ ゆい)ちゃんにつけられたあだ名で、唯ちゃんは、噂好きでお喋りな子だ。

悪い子ではないんだけど……ちょっとした話しでもこの子にかかると大げさになって、あっという間にスタッフ全員に広まってしまうのだ。


……そう言えばスピーカーってあだ名を付けたの、九嶋くんだったわね。


「九嶋くんも……いろんな顔を隠してるよね。スピーカーに通して欲しい?」

思い通りになるのは悔しいので、ちょっとだけ反撃を試みる。

そんな言葉も予想通り、とばかりににっこりと笑いながら九嶋くんは答えた。


「俺は別に困らない。ねーさんは、困るよね?」

……困るわよ。

今だってどうしてこんな事になっちゃったんだろうって、そう思ってるんだから。
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