ゆりかご
「…。」

翔矢は化粧をしたあたしを見ても、何にも言ってくれなかった……あの頃から、あたしに対する気持ちは薄れていたのかな…。

まぁ、男なんてそんなものかもしれないけど。

何度か手が止まりながら、ようやく化粧を終えたーーーコータローなら”かわいいよ”って言ってくれるのかな…なんて考えながら。


気持ちの整理がつかないまま、カギをかけて家を出ると、外は少し強めの風が吹いていた。

家に居るかどうかはわからないけど、いつまででもこのままにしておけないから…翔矢と話さなきゃ……。

決して軽くはない足取りで、あたしは翔矢の家に向かった。



「いらっしゃいませ。」

その足が、コンビニへ寄り道をさせる。

「…。」

やっぱりメールの返信を待とうかなぁ……あぁもぉ、しっかりしろ。

不安や迷い、色んな気持ちが、あたしをコンビニに縛り付けていた。


「いらっしゃいませ。」

少ししてから入ってきた客を見て、あたしの表情がこわばるーーー雪乃…。


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