やさしい恋のはじめかた
大丈夫、私はまだ大丈夫。
強がってなんかいない。
私がもっともっと頑張ればいいだけのこと。
それからの食事は、そう自分に言い聞かせながら他愛ない話題を並べ、約一時間後、私たちはお店近くの地下鉄の入り口前で別れた。
「久しぶりに泊まってく?」と大海は誘ってくれたけど、体調があまり良くないことを理由に--つまり生理が来ているからと断り、一人、地下鉄の階段を下りていく。
本当はまだその日じゃない。
というか、最近周期が乱れていて、いつ生理が来るか分からない状態が続いていたりする。
だけど、どうしてだろう。
しばらくそういうことをしていないからか、取って付けたような大海の優しさが逆に辛くて、今夜はどうしても一緒にいられない気分だった。
かといって大海に会ったその足で桜汰くんのところで髪を切ってもらう気分にもなれず、自宅近くのコンビニで少しだけお酒をとおつまみを買い、テレビを見るともなしに見ながらそれらをテーブルに広げ、一人で飲み直す。
それでもお酒の味がしない。全然酔えない。
自宅だし、ラフな格好だし、少しも気取ることなくリラックスして飲めるはずなのに、どんどん気が滅入っていくのはどうしてなんだろう?
「もっと頑張らなきゃ……」
何かに取り憑かれたように呟いたそれは、まるで真綿で首を締めるような軽い窒息感を伴いながら静かな部屋に少しだけ反響した。