やさしい恋のはじめかた
 
目に入らずとも、本当かなぁ!?という疑いの眼差しが横からビシビシ伝わってきて、今すぐ嘘です!1ヵ月なんて我慢できません!と白状してしまいたくなったけれど、グッと堪える。

雪乃に言われなくても、私だってこのままじゃマズいってことくらい薄々気づいている。

ここのところは特にそう。

渾身の企画書を出しても突き返されるばかり、彼氏とは接待だ同僚と飲み会だと理由を付けられては会えない日々、挙句、結婚話もかわされ続け、仕事もプライベートもどん底。

いつまでこのどん底状態が続くんだろうと思うと途方もなくなってきて、桜汰くんのところに足を運ぶ回数がめっきり増えてしまっている。


雪乃とは部署が違うため、廊下で別れたあと、目に留まった休憩室でカフェオレを買い、所属する企画部に足を向けた。

すると、そこに近づくにつれて室内から荒々しい会話が聞こえてきて、早々にげんなりする。


「だから今回のCMは若手で今一番勢いのある佐藤准多くんにお願いしましょうって言ってるんですよ!クライアントも話題性のある俳優でと仰ってます。今ならスケジュールも押さえられますし、佐藤くんの何がいけないんですか」

「いいとか、いけないとか、そういうことを言っているんじゃない。もっと綿密に企画を練った上で、本当に佐藤くんにお願いしたい仕事かどうか考えてくれと言っているだけだ」

「何をそんな悠長な……。インスピレーションで動けって言ってたのは主任ですよ。俺はどうしても今回は佐藤くんで行きたいんです!」
 
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