やさしい恋のはじめかた
6.よちよち歩きのお年頃
それからほどなくして、新しい部署の立ち上げとともに、ひとつの仕事が舞い込んだ。
前に大海が言っていたように、今の私の仕事は、大海や堂前さん、稲塚くんなど、企画部の社員のサポートをすること。
例えば、ポスター撮影があれば、カメラマンやモデル、衣装などの手配やスタジオを押さえたり、ケータリングの注文やスタッフを集めるのもまた、私の仕事になる。
簡単にまとめると、以前、自分の企画を練る合間にしていた仕事が本職になったという感じで、実はデスクだって大海たちと同じフロア、ちょっと席が移動しただけだ。
新しい部署、とは言うけれど、実際には実験的な部分も多くて、前まではプレゼンが通って本決まりになった企画を考えた人が一から十までほぼひとりでやっていた仕事の負担を減らすため、という意味合いも大きい。
言ってしまえば雑用は、想像以上に多いし、恐ろしく時間を取られる作業だったりする。
細かいチェックもあるし、何件も案件を抱えていれば、それこそ寝る暇さえない。
前までは手の空いている人が暗黙の了解的に手伝っていたけれど、そこをすっぱり分けることで仕事の効率化を図るのが、今回新しくサポート専門の部署が立ち上がった経緯だと、そういうことのようだった。
そんな中で舞い込んだのが、堂前さんが得意とする化粧品類の企画。
タレントさんが、ぜひにと推したヘアメイク担当に桜汰くんの名前があった。