やさしい恋のはじめかた
要は、我が身かわいさのあまり、ということだ。
大海に言われて、今の自分の気持ちだけでも伝えてみてもいいかもしれない、なんて思っても、そのあとの仕事の流れで桜汰くんと関わることが決まって、その瞬間、そのときでいいかという甘えが出てしまっていた。
そんな自分が本当に情けなさすぎて嫌になる。
私ってこんなに最低な人間だったんだろうか。
思わぬタイミングで告白と部署の新設の話が重なったことや、そのあと忙しくなったことを理由にここまで先延ばしにしてきたけれど、本当は全部〝私が会いたくない理由〟を正当化するため。
会わない、会えないと〝会いたくない〟は全然違うのに……。
二ヶ月も放っておいて今さらどんな顔をしたらいいか、なにを話したらいいか。
気を使ってくれているのだろう、以前と同じようにフランクにはじまった会話は、けれどすぐに途切れてしまい、謝らなくちゃと思えば思うほど、ますます言葉が見つからずに口が閉じていくばかりだった。
「髪を伸ばしはじめたこと、知ってるよ」
すると、ぽつりと桜汰くんがつぶやいた。
はっと顔を上げてそちらを見ると、壁に背中を預け、腕組みをしていた桜汰くんと視線がぶつかる。
「店に来たんだ、里歩子の彼氏。里歩子を待ってやってくれって頭下げられちゃった」
「な、なんでっ……」
「フェアじゃないのが一番嫌なんだって。男の俺から見ても、すげーいい男だったよ」