やさしい恋のはじめかた
それがどういう因果からか、桜汰くんとだけはずっとつながっていて、いろいろなことがありつつも、こうして今、隣で笑っているんだから、やっぱりつくづく不思議だ。
桜汰くんを見あげながら、ふと、そんなことを思う。
「里歩子? どうした、俺の顔見ながらぼーっとして」
「あ、いや、ふと今、10年ってすごいなって思っちゃって。考えてみたら、なかなかないよね。もとは顔も名前も知らない仲だったのに、ふとしたきっかけでつながりができて、それがいつの間にか10年も続いてたなんて」
「ああ、まあなぁ。言われてみれば10年ってすげーよなぁ……」
しみじみ言うと、桜汰くんも感慨深げに視線を宙にさまよわせる。
この10年、本当にいろいろなことがあった。
友だち関係が長かったせいで忘れかけていたけど、桜汰くんに彼女ができたら少なからず嫉妬のような気持ちを抱いたし、反対に私に彼氏ができると桜汰くんは「品定めしてやる」とか言って、なぜかしきりに見たがったりもした。
お互いに失恋すればお酒を飲みながら慰め合うこともあったし、仕事のことでも、よく相談に乗ってもらったり厳しくも温かいアドバイスをもらったり、なにかあれば頼るのは――真っ先に顔が思い浮かぶのは、いつだって桜汰くんだった。
それを私は単に〝長い付き合いだから〟とか〝ヒーローだから〟ともっともらしい理由を作って片付けてきたけれど、本当は、ずっとずっと、もしかしたら……。