私を本気にさせないで
苦しくてどうしようもなくて、必死に酸素を取り入れようと口を開けた瞬間、それを待っていたように彼の舌が口内に侵入してくる。

強引だけどなぜか優しくて、思わずとろけてしまいそうなキスに、次第に抵抗する力も弱まっていってしまう。

自分でも信じられなかった。

どうしてキスを受け入れているのか。
どうしてこんなにもドキドキしてしまっているのか。
そして、どうしてこんなにもやめないで欲しいと願ってしまっているのか……。

むわっとむせるような暑い狭い密室空間には、私と彼の吐息が漏れるだけ。
それがまた私の気持ちをより一層昂ぶらせる。

なにも考えられない。
今がただ、彼のキスに溺れていたい――。

そう願ってしまったその時、理性を止めるように暗闇に明かりが灯された。
それと同時にゆっくりと動き出したエレベーター。
『大丈夫ですか!?』と心配する声が緊急連絡を通して聞こえてきた。
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