私を本気にさせないで
「俺だけはなにがあっても味方ですから」
「うわぁー……幸、あんたそれ、めんどくさい女を通り過ぎているんですけど」

「……そんな引き気味に言わないでよ。本気で落ち込むじゃない」

次の日の退社後。
いつもの会社近くの居酒屋へと一緒にやってきたのは、唯一会社で心を許せる同期、弥生。

大森君との一連のことも話しているし、藁にもすがる思いで飲みに付き合ってもらったけれど、そんな弥生から冷めた視線と言葉が与えられてしまい、宣言通り本気で落ち込んでしまいそうだ。

「本当、自分でもどうしたらいいのか分からないのよ。……大森君にはあんな態度取っちゃったし」

落ち着かない心をしずめるように、ビールを一気に飲み干すと、弥生は心底呆れたように大きな溜息を漏らした。
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