放課後コイ綴り
「ずっとこっち見てるから」
「っ!」
やだやだ、恥ずかしい。
まさかばれていたなんて……!
かっと頬があつくなるも、一条くんは「ああ」とひとり納得したように声を漏らす。
「もしかして寒い?
そろそろ暖まる頃だと思うけど」
「あの、その、うん」
どもってしまい、はっきり言えなくて。
寒さには慣れても、いつまで経っても一条くんに慣れないままの自分のことが恥ずかしい。
「はい」
唇を噛み締めて、顎を引いていたわたし。
彼の言葉に誘われるように視線を上げる。
「俺は平気だから。やる」
そう言って、彼はポケットから取り出したカイロをわたしの方に差し出した。
瞳の中にはわたしが映っている。
うまく喋れなくて、彼の言葉に同調しただけ。
確かに寒いと思っていたけど、そんなことを言いたいわけじゃなかった。
なのに彼はこうやって気を回してカイロをくれる。
わたしなんかにくれるんだから、たまらない。
「ありがとう……」
互いに立ち上がることはなく、上体を動かして通路の空中で受け渡し。
わずかに触れた一条くんの指先は、わたしよりは冷たくないけどそこまで温かいわけでもない。
すぐに机の上に戻された彼の左手は、わたしの体温が低すぎたのか。
きゅうと丸められたのが視界の端でちらついた。