魅惑の純情泥棒


わ、うわ、

彼の顔がぐっと近付く。

和穂はたまらずギュッと目を瞑った。

緊張して自然と下を向いてしまう。

そんな和穂に誠太はちょっと考えてから、顎にそっと手を添えてゆっくりと上向きにした。

触れられた箇所がドキンドキンと更に熱を持つ。

お互いの息遣いが耳に入り、いたたまれなくなってきた。



…わっ、わわっ、

さわ…っと頭の後ろに大きな手が滑り込んで来て角度を固定され、これはいよいよ逃げようがない事を悟る。


…胸が痛いぐらい、ドキドキする。





「なんか、いつもと逆だな。」

クスリと笑われて、

ゆっくりと彼の唇が触れた。


…っ

柔らかくて驚く程薄い皮膚の感触に、一瞬息が止まる。

唇から痺れるような心地よさが身体全体にぶわ…っと広がって、心臓がフル活動し、脳がフワフワしてきた。


彼のズボンの生地をギュッと握っていた手が思わず震える。


私…誠太とキスしてる。


大好きな人と、キスしてる…。


そっと離された後、ものすごく近い距離で目が合い、更にドクドクと胸が鳴った。

まるで耳の側で心臓が鳴っているみたいに、全部の神経が研ぎ澄まされておかしくなってる。



誠太が、男の人の顔をしていた。



「…ね…、これ、ヤバいね。」


「ああ…、」


二人して、顔を赤くして俯く。


キスって、こんなヤバいものだったのか。

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