オトナな部長に独占されて!?
緊張感で、心臓がバクバク鳴っている。
息を潜める私のちょうど対極の位置で、ふたりの部長は話し始めた。
「大体の予想はついていますが、お話とは何でしょうと一応お聞きします。
3月末の人事会議のことでしょうか?」
「分かってんじゃねぇか、お若い部長さんよ」
ガタンと大きな音がしたのでビクッとしてしまったが、どうやら西園寺部長が椅子に座っただけみたい。
聞き心地の良いバリトンボイスと、煙草の吸い過ぎでしゃがれたような声が、広い会議室に交互に響く。
「西園寺部長は、何がご不満ですか?
あの会議で私は至極真っ当な意見を述べたつもりですが」
「ハハッ、間違ったことは言ってねぇな。
イギリス帰りの賢い坊ちゃんのご意見は、笑えるほど正しいさ。
だがな、ここは日本だってこと忘れてねぇか?」
「場所の問題ではないでしょう」
「いいや、問題だ。
日本のことわざにはこういう物があるんだよ。長い物には巻かれろってな。
日本の会社ってのは、綺麗事だけで回ってねぇのよ。
納得いかない慣習だってな、目を瞑って今まで通り、年長者に従ってやってれば角が立たねぇし、丸く収まるんだわ。
それが、お前さんがいちいち突っかかるから、やり難くなっちまったじゃねぇか。
女なんか出世させたってな、金と時間の無駄なんだよ。
高村だってもって後2、3年。どうせ嫁に行って辞めるぞ? 育てても無駄無駄。
暗黙の了解って奴を壊してくれんなよ、坊ちゃんよ」