オトナな部長に独占されて!?



葉月部長と私の間に気まずい空気が流れていると、お茶を入れた店主が戻ってきた。



「いやいや、お待たせしました。

今日は高村さんが来てくれると言うから、宇治の抹茶と、綺麗な生菓子を買っといたんですよ。食べてくださいね。部長さんも。

高村さんはいい人ですね。
こんな爺さんの話をいつも真剣に聞いてくれて、心が慰められてますよ」



話を真剣に聞いているのは、もちろんお客さんだからだ。


鶴亀さんは奥さんが亡くなっていて、一人暮らし。

38歳の一人息子がいて、その人もカメラマンらしいけど、日本各地を転々とするフリーカメラマンでここにはいない。

店主は息子さんのことを、『38にもなってフラフラして情けない』と、私に愚痴っていた。



きっと鶴亀さんは寂しいのだろうな……ということは、チラリと感じたことがある。


私を歓迎してお茶菓子まで用意してくれるのも、話し相手になって欲しいからなんじゃないかと、薄々気づいている。


もしや、契約する気は最初からなかったりして……そんな不安も頭を掠めたことがあるけど、それを否定したい気持ちで私の心はいっぱい。



契約を取りたい。

一本でも多く取りたい。

第二営業部の誰より多く、契約を取って帰りたい。


そうすれば『女だから』と言われなくなるよね?

申し訳ないが、店主の寂しさ解消にいつまでも付き合ってられない。

今日こそ絶対に、契約を‼︎


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