オトナな部長に独占されて!?



その時、葉月部長が動いた。

自分の鞄から社名の書かれたA3の白い封筒を取り出して、息子さんに渡した。



「これは?」


「もし宜しければ、という程度のご案内です。

親子で積もる話もおありでしょう。私共はこれで失礼させていただきます。
高村さん、行きますよ」



部長が一礼して、私もそれに倣った。

写真館から出て元来た道を引き返しながら、やるせない気持ちで一杯だった。


鶴亀写真館のために、私、何もしてあげられなかったなぁ……。

契約も取れなかったし。


足元に向けて溜息しか出てこない私に対し、葉月部長は「気持ちの良い秋晴れですね」とか言ってくれる。


青空なんて見上げる気分じゃないよ。

今日の私は全てにおいてダメダメで、落ち込まずにいられない。



駅前に着くと、葉月部長が「休憩しましょう」と珈琲ショップを提案してきた。


いつもの私なら、「まだ仕事がありますので社に戻ります」と言うところだが、今は強気に出ることができない。


今日何度目かの溜息をついてから、部長が紳士的に開けてくれたガラス扉の内側に、黙って足を入れた。


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