恋愛格差
「おれって結構可愛がられて育ったんだよ。」
優は
県庁に勤めるの父と専業主婦の母、年の離れた姉の四人家族。
姉が生まれた後なかなか妊娠しなかったこともあって、家族や親戚からもとても大事にされてきた。
きっと生まれ持った天性の愛らしさや優しさが、彼を愛情で包んだんだろう。
「公務員の父とそれに寄り添う専業主婦の母。家の中は秩序があって、厳しかったけど大事にされてた。俺はとくに反抗する必要もなかったし、十分満足していた。
親の期待を裏切らないように、皆が楽しめるように。
そうすると皆、幸せだったから。
それなりの進学校に入って、社会勉強のつもりでバイトを始めた。受験の準備に入るまでという親との約束で。
そこには今まであまり関わりの無かった人たちがたくさん居たんだ。」
定職に就かずフリーターしてる人。
彼氏の家に転がり込んで妊娠してしまった専門学校生。
養育費を払うために仕事の後内緒でバイトに来てるバツイチサラリーマン。
店長と不倫関係にある女子大生。
「俺の回りには普通に両親が揃ったやつと、淀みない生活を送っている家族しか存在しなかった。見えてなかっただけなんだろうけど。
衝撃だったよ。世の中は乱れてると思った。
だけど、それでもいい人ばかりで、仕事自体は楽しくてさ。
そのバイトでゆかりさんに会ったんだ。
ゆかりさんは今と変わらずゴージャスな雰囲気を纏っていて、一つ上なだけなのにものすごいお姉さんに見えたな。
頼もしくてさ、仕事でお世話になってるうちに仲良くなった。
バイトを始めて3ヶ月もした頃、ゆかりさんと駅に向かおうとしたら、近くのラブホから知ってる人が出てきたんだ。
俺の高校の同級生の親父。相手は明らかに母親じゃない、高校生か大学生。
その親父、警官なんだよ。高校のPTAの会長で。
俺もうショックでさ。
そうなると自分の親父も疑わしく思えてきて。」
そこでゆかりさんはこう言った。
「世の中は乱れてる。でも自分さえ律してればそこに流されることは無いわよ。
それにあんなことする人だって、大切なものはあるし、何か理由があるのかもしれないでしょ?
良かったね。社会勉強になって。」と笑った。
客観的でものすごくテキトーな意見だけど、混乱していた優にとってこの言葉は一筋の光みたいに思えた。
「こんな人もいるんだ、こんな風に前向きな考え方ができる人になりたいし、この人のそばにいれば俺は間違いのない日々を送れると思った。」
ただのバイト仲間だった彼女は優の心に入り込んだんだ。