恋愛格差
目を閉じて優は自嘲気味に笑った。
「知って、どう思った?軽蔑した?」
ゆっくりとまた私を見つめるその瞳に迷いはなかった。
何かから逃げようとしている様子はない。
だから思ったままを告げた。
「……軽蔑なんて……どこを?セックスに依存したとこ?いろんなことから逃げたこと?
高校生なら年上のお姉さんと恋仲になってセックス三昧になるのも仕方ないし、繊細な男の子が羞恥に晒される事や裏切られたことで逃げた事も仕方ないと思う。まず、ビデオに録られるなんて有り得ないし……」
じっと私を見てニヤリと笑った。
「透子はそういう人だった。」
そして安心したのか溜め息をついた。
「でも、私が許せないのは私から逃げたこと!ゆかりさんが脅してる訳じゃないのに、仙台に行くのはどうしてなの?」
「俺は自分から逃げたんだよ。弱い自分が許せなかった。過去の自分が紛れもなく今の自分に続いてる。
大学に入った時点の俺に戻りたかった。」
「過去と決別して?それは私も入ってるのよね?」
「それが……誤算なんだよ。」
「え?」
優はおもむろにソファから床へ降り、正座をした。
「透子だけはどうしても捨てることが出来なくて、でも透子を捨てなかったら生まれ変わることは出来ない。」
上から見下ろす体制になって、私は優の後頭部を見ていた。
「そんな時に強盗が透子を襲ってるのを見た。俺は……腕力的に出来なかったけど、殺してもいいと思った、マジで。
その時、俺は何に拘ってたんだろうって。」
振り返った優は、とても穏やかだった。
「俺が失ってはいけないものは社会の評価じゃない、透子だけだ。」
一年間、言われていたにも拘わらず、今の言葉が胸に染み入ってくる。
「……す、すぐ…る…」
涙が込み上げてきた。
胸が熱くなって今すぐ抱き締めてほしい、と思うのに。
彼は私を振り返ったままじっと私を見ている。