ドロップアウト
その後直ぐにルルアとセロンのもとに本を持ったソフィアと少し機嫌の悪そうなレヴィがやってきた。
レヴィはランチメニューとにらみ合っている二人を見つけると早足で二人に近づき、呆れたような顔で話しかけていた。
そしてルルアとレヴィが何やら言い争いを始めている。
その様子にチェルノは思わず小さく笑い声をあげた。
「なあチェルノ。お前さっきから何見てるんだ?ひとりで笑ってて気持ち悪いぞ。」
向かいに座っていた栗毛の青年は怪訝そうな面持ちでチェルノに声をかける。
「え!?あ……いや、何でもないよ」
そこでやっと自分が笑い声を上げたことに気がつき、慌てて答えたチェルノ。
「…ふーん.....」
栗毛の青年は怪しむように琥珀色の瞳でチェルノを見た後、先ほどまでチェルノが見ていた方向に目をやる。
チェルノも同じように目をやると、そこにランチメニューとにらみ合う二人の姿はなく、代わりにランチを持って学生食堂を出て行こうとする四人の姿があった。
無事昼食が買えたらしい。
チェルノがそんなことを思っているとその向かい側にいる栗毛の青年が音を立てて椅子から立ち上がった。
その音に驚き、四人を見ていた目を正面の青年に向ける。
「ど、どうしたんだよ、フラ.....」
チェルノはそこまで言いかけて言葉を止めた。
何故なら栗毛の青年がこれでもかと言うほどに目を見開いていたからだ。
チェルノはもう一度声をかけようとするが今度は彼に言葉を遮られてしまう。
「悪いチェルノ。先教室戻ってろ」
そう言い捨て、栗毛の青年は学生食堂の出口へむかって走っていった。
「あ、おい!」
そう声をかけ手を伸ばしたが、既にその青年は学生食堂から出て行ってしまった。
行き場をなくしたチェルノの右手はゆっくりと丸いテーブルの上に落ちた。
「...せめてランチ片付けてからにしてくれよ...」
チェルノの呟いた言葉は賑やかな学生食堂の中に消えていった。