幸せ行きのチケット
もうすぐ春になる。

そう思わせるような桜の蕾はもうすぐ咲く。

ここからの景色を見るのは何ヶ月ぶりだろうか。

もしかしたら、一年は経っているかもしれない。

ここに来る時は、祐輔と一緒にバイクに乗って来たかった。

今はもう、祐輔とここに来ることはできない。

隣にはもう、誰もいない。

あの笑顔も、馬鹿な話も、カッコイイ眼差しも…。

今はもう見ることができない。


私はベンチに座り、何も考えずにぼーっとした。

かすかな風の音。

雀の鳴き声。

自然の山の香り。

ベンチの木の匂い。

ゆっくり上がっていく太陽。

まだ赤みがかかった空。

たくさんのものがここに存在する。

私と一緒に。

今生きている人と一緒に。

たくさんの命があるから、その分たくさんの愛がある。

たくさんの人がいるから、その分たくさんの想いがある。

たくさんの想いがあってこそ、人は幸せを感じることができる。

それが例え小さな幸せでも。

たくさんあればいいと思う。

私はそんなことを祐輔と一緒に学べたんだよ。

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